昔の文章を掘り返す【2000/03/31 A jerks/Brain Failure@Scream-Club】

北京パンクには聖地がある。それが、伝説のライブハウス「豪叫倶楽部(Scream−Club)」である。
まず、このライブハウスについて、述べておかねば為らないだろう。

この「Scream−Club」は、98年にオープンした。機材もろくになく、音響も最低レベルのライブハウスだったのだが、生まれたての北京パンクの主な活動場所として、週末にはメチャメチャ熱いパンクのライブが行われてきた。以来、ライブハウスとしての地位を確立してきた。
このライブハウスを拠点とした主要なる4バンド(69・A jerks・脳濁・反光鏡)を「無聊軍隊」(WULIAO CONTINGENT)と呼ぶようになり、全国のアンダーグラウンド界を席巻し、ついにはオムニバスアルバムをメジャーで発売するに至った。それと同時に全国にもパンクの聖地として認識されることになった、Scream−Clubだが、経営難が深刻になるにつれ、ライブ回数は減っていき、ついには閉店してしまった。将来的には、行政の区画整理のための整備地区に指定されているため、この建物自体も消滅してしまうようだ。

僕が日本で聞いていた北京パンクとは、やはり、Scream−Clubのことであって、北京にやってきて、すでにScream−Clubが無いのは非常に残念であった。しかし、このライブハウスが復活すると言う情報を聞きつけた。なんでも、ライブハウス自体はまだまだ、あるらしく、今回は特別に、この場所でパンクライブを行うとのこと。新しいオーナーでも現れたのであろうか。ゆくゆくは、ライブハウスの名前をかえて、区画整理で退去命令が出る間では、ライブハウスとして続けていくらしい。


なにはともあれ、僕にも北京パンクの聖地でライブが見れることになった。しかも、出演バンドは、A jerksと脳濁(Brain Failure)である。このうえないシチュエーションである。

今晩のライブはとにかく凄かった、どれだけの人がこの復活を待っていたのだろう。こんな狭いところにどれだけの人が入れるのだろう。もう、中はしっちゃかめっちゃかだった。
西洋人がとにかく多く、いかに彼等によって北京パンクが支えられてきたのかがわかる。この熱狂に一体ここは何処?とうたがうほどだった。パンクに国境は無いと感じられる光景だった。

さて、ライブだが、まずはA jerks。
北京パンクの申し子だ。いきなり一番最初から名曲「錯誤」だった。オムニバスにある、名曲をこの状況で聞けるのは嬉しい限りである。周りはもう飛ばし飛ばしの白熱のLIVEに!!
人がうずけいているので、ダイブをした人は天井に足がつく。
ふと、見上げると、足跡が沢山ついていた。これは、何年も前から積み重なってきたものなのだろうか。
それから、アルバム収録の曲は控えめに新曲が多かった。
とくに、「頑童」は激しくてパンクの真髄のような曲だった。
やはり、今の彼等がどんな音楽をするのかを見せるところなど、昔のスクリームの時と同じく、日々進歩しているというべきなのだろうか。
オセンチになっているのは僕だけなんだろう。

続いて脳濁(Brain Failure)
彼達は、昔からの客にはたまらないアルバムからの選曲だった。2年ほど遅れてここにやってきた僕にとっては、まさに体験したかった北京パンクのライブだった。
オセンチに浸りぱなしで、ヒートアップする会場を見渡す。もちろん、僕のその中にいたし、エネルギー感じることがでした。
盛り上がりが最高潮に達する、その時に流れてきたのは、「Fackin' Disco」だった。
これを聞いてしまったら、どうしようもなくなる、この興奮の坩堝はなんにたとえられるだろう。

今日は、北京パンクにとって、忘れられない日となった。僕もやっと、仲間入りできたと心から思った。
なんだろう、涙が出てきそうになるのは、彼等が突っ走る姿に、何かを重ねて見たのだろうか。
ライブ後、帰ろうとしない皆を見ていると、名残惜しい、このライブハウスに、自分が泣きそうになるのが解る気がした。
<完>


客でごったがえしの内部



ステージはこんなに近い



沈岳(A jerks Vo)



李鵬(A jerks G : left)



関連リンク

無政府主義男孩 A BOYS
http://yaogun.com/artist/punk/aboys.htm
腦濁楽隊 BRAIN FAILURE
http://yaogun.com/artist/punk/brain.htm