昔の文章を掘り返す【2005年09月08日記 雎安奇 「北京的風很大」】

埋もれた名作のドキュメンタリー映画をまた一つ。

「你覚得北京的風大嗎?」
(北京の風は強いなあと思う?)

この質問を、体当たりで、無作為に色んな人に、聞く。
がつがつと、なれなれしく、生意気に、若気の至りで。

それだけの映画。

それだけの筈なのに、
なんか、愉快。
なんか、愛くるしい。
なんか、涙出る。

はっきりいって、この映画、テクノ。ゆるくてまったり。監督がおこなったインタビューという作業、サンプリングと思う。人の流れも、発する声も、北京の景色も、その刹那を断片的に貼り付けてある。なんか、意図的ではないにしろ、愛情っぽく思える。表現したかったのは、若者から北京の人・モノへの愛情。(← 誉めすぎた)

個人の風に関しての見解としては、北京ではなく、天津にいたときの話だけど、春先、数日間ほどえらい風が強かった時期があった。あまりにものひどさに、街中が埃や塵まみれだった。えらいことに、僕のいた学校の宿舎前はちょうどグラウンドで、視線をさえぎるほどの砂埃に外に出ることなど、到底無理。景色も悪夢にしか見えない。更には、頑丈そうなガラス窓を閉めても、一晩経てば砂埃が窓に近いほうの棚に積もってしまうほど、こんなんだから、長年縁の無かった喘息症状がでてきてしまった。かわいそうなのは、喘息を知らない同居人、よほど僕が魘されて呼吸困難でいるのを不憫に思ったか、全く寝付けず、当の病人よりもげっそりしていた。「君、死ぬかと思った。」

風、確かに強いなあ。



雎安奇「北京的風很大」/There's A Strong Wind In Beijing/16mm/50min/2000年
監督:雎安奇
撮影:劉勇宏
撮影補助:柳立君
録音・編集:雎安奇


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